スタッフブログ

2022/06/06 21:06


昔、先輩にディレクターは「捨てる」のが仕事だと言われたことがあります。


「昨日あった面白い事」というVTRを作る時

24時間のVTRを用意しても誰も観てくれません。

当然見てもらうための尺にする必要があります。


24時間を決めたられた尺に収めるとき…例えば1分のVTRを作るなら

23時間59分を「捨てる」という作業が必要になってきます。

人によっては「捨てる」ではなく1分を「抽出する」イメージを持つ方もいるかもしれませんが

「拾い集めた1分よりも、凝縮した1分の方が濃厚で面白くなる」

というのがディレクターの考え方です。



「捨てる」というのは「磨く」に近い作業で

24時間の素材をまず1時間のVTRにして、さらに30分、15分、5分と精査していくからこそ

残った1分は当然面白いというロジックです。




特に新人のディレクターは「捨てる」作業に悩みます。

どこを捨てていいかわからずVTRが無駄に長くなってしまいがち。

僕が初めてVTRを作った時はたった60秒のVTRをつくるのに三日三晩かかりました。

「すみません、1分じゃ描ききれなかったので20分で持ってきました…」

というのはよく聞く話です。



余談ですが…ゴールデンのバラエティ番組だと1時間の素材が1分くらいになるイメージで

10分のVTRを作るなら10時間くらいの素材が必要になります。

クオリティを上げるならそれなりの素材量が必要で

このブログも下書きから半分以上を削ぎ落としていますし、

いちご新聞の原稿を削ぎ落としていったら2行になっちゃった…なんて時もあります。

(↑だから江口さんが苦労しているわけです!)




この「捨てる」「磨く」という果てしなく大変な作業は

今だからわかるのがディレクターの1番の醍醐味かもしれません。







時々

「うえのさんの番組でいちごちゃんを使ってあげて!」

みたいなお話を聞く事があります。



実はテレビとアイドルは非常に相性が悪いと僕は感じていて

これはテレビが性格が悪い部分もありますが

テレビマンは「視聴率をとるにはどうしたらいいか」を考えるため

普通の描き方をしてくれません。どうしても「裏側」や「新情報」で視聴者を驚かせようと考えます。





もしテレビでアイドルを描くなら

(芸人さんが面白くしてくれる番組は別ですが)

アイドルというキラキラしたイメージとのギャップを描かなくてはならず

自然に

「アイドルなのに貧乏」「アイドルの裏恋愛事情」「アイドルの素行の悪さ」

みたいな方向へ流れてしまいます。


「物販で撮ったチェキの◯%を運営に取られるため手元に残るのは数百円…」

「夜行バスや運営が運転する車にすし詰めになって移動」

もしくは

「ご飯に魔法をかけて美味しくする」悪ノリ




テレビというメディアでとりあげてもらうのだからしょうがない

売れる手段にプライドは邪魔だと割り切らなきゃいけないのか?



努力することとプライドを捨てることは少し違います。




僕もディレクターなので視聴率のために

一般視聴者の目線で描くテレビ側の気持ちもわかりますが

江口いちごのスタッフとしては納得がいきません。


僕が近くで見ているアイドルの方たちは往々に努力している人たちです。

少ない資金力でグッズやCDを作って

ダンスの練習をして衣装を作って

もちろん美容にも時間を割いて…

必死に自分を表現しようとしています。



テレビという悪意では描けない部分がたくさんあります。

言い方を変えれば彼女たちの努力が十分に伝え切れていないのかもしれません。

まだ「新人ディレクターのVTR」みたいなものです。これから

1つ1つのステージ

1つ1つの配信

1つ1つのツイートで

素材を増やしブラッシュアップして魅力的に見せるのが僕の今の楽しみです。