2022/06/10 21:50
僕が通っていた大学には敷地内に寮があり
大抵の1年生はその寮に入るのが定番で僕も類に違わず大学生活の1年をその寮で過ごしました。
2人で一部屋、キッチンがなくてシャワーは共同。
ルームメイトはジェイソンというアメリカ人。
(The アメリカ人という感じのおちゃらけた奴です。)
なんだか文字にすると刑務所みたいな場所ですが
仲間と苦楽を共にするという意味では学生時代のいい思い出です。
ある期末試験の前日、必死に勉強していたジェイソン。
思ったよりも広い試験範囲に悪戦苦闘。
試験は昼過ぎからのようですがほぼ徹夜状態で挑むとのこと。
朝の授業に僕が部屋から出ていくときも朦朧と勉強していました。
僕がいた寮にはキッチンがない代わりにミールプランという
「食堂で3食自由に食べられる」プランがついていました。
キッチンをなくして寮の建設費を抑えた上に食事代を上乗せしてくるという
悪意を感じなくもないですが…
食堂はほとんどが1年生で埋め尽くされ
授業の合間に食堂に行けば大抵誰かしら友達がいます。
期末試験の期間中やんちゃ心を抑えていた学生たちも
試験が終われば張り詰めていた糸が緩み、食堂に笑いが増えます。
そこでいつもおちゃらけてるあいつがいない事に気づくのです。
「あれ?ジェイソンは?」
僕は朝の朦朧と机にむかうジェイソンの姿を思い浮かべ
最悪の事態を想像します。
試験直前に寝落ちする最悪のパターンでは!
急いで部屋に戻ってみると…爆睡しているジェイソン。
試験の開始時間まで残り5分。
たとえ今起きたとしても間に合わないのですが
とりあえずルームメイトとしての使命を果たすため叩き起こします。
もしこれが逆の立場だと思うと…パニックですよね。
僕ならなりふりかまわず起きたままの姿で試験会場になだれ込むかもしれません。
僕の奇声に目を覚ましたジェイソン。
一瞬パニックになりますが…
落ち着きを取り戻すと平然と歯を磨き始めます。
「とにかく急いで教室に迎った方が…!」
「……いや、もう遅刻は決定だからあえて30分遅らせていく!」
これを聞いた時僕は「こいつはなんて悪魔なんだ!」と思いました。
こいつ遅刻した分際で万全の態勢で挑もうとしてやがる!
そんなことが許されるのか…
確かに5分遅れようと30分遅れようと怒られる事に変わりありません。
「いずれにせよマイナスなら少しでも自分に利益を…」
怒られる環境をむしろ自分の都合のいいように好転させる発想は
当時の僕には衝撃的でした。そのおかげで彼の悪知恵はとてもいい人生の教訓になりました。
あれから時が経ち僕は江口いちごのスタッフに。
ある時江口さんから動画の撮影を頼まれました。
「音声付きの動画を特典にしたい」と。
軽く打ち合わせして撮影も滞りなく進んだはずが…
後日確認すると、動画に音声が入っていません。
正確には音声は入っているのですが全く聞き取れない!
どうやら撮影の時に僕がマイクを遮ってしまっていたようです。
これは怒られます。
「しまった…」と思いながらもこんな窮地に陥った時はあの時のジェイソンを思い出します。
ピンチはチャンス!
「この音声がない動画を新しい企画にしましょう!」
この環境を好転させる一打のはずが、
江口さんにガチギレされました…。
人生はなかなかうまくいかないものです。