2022/06/28 02:01
僕が江口さんを知ったのは3年前
突然携帯に連絡がきたのがきっかけでした。
「ミュージックビデオを◯◯円で作ってください!」
その時、そういえば飲みの席で知り合いに
「映像を作って欲しいアイドルの子がいるから手伝って欲しい」
と言われた事を思い出しました。
顔も素性も分からず突然の連絡でこの文章、なかなかパンチのある人という情報しかありませんでしたが
僕はミュージックビデオを手伝うことにしました。
今日はお金に関するちょっぴり大人なお話です。
どこの世界も似たようなものかもしれませんが、普段僕がいるテレビ業界はお金の面、特にスタッフのギャラに関してはだいぶゆるい業界です。
タレントには数百万円のギャラを支払うのにADのタクシー代1000円を経費として認めず自腹を切らす。
何日も徹夜して会社で泥のように寝ているのを休日とカウントする。
定時で帰らせ残りは家でやってこい…。
ディレクターに番組制作の依頼がくる時、最初に報酬が提示されることはまずありません。
報酬によって手抜きをされると困るからです。その割に追加の編集や予定にない撮影などやりたい放題です。
そして最終的に報酬の話になると値引きできないかと。
全ての現場がそうではないし、時代と共に少しずつ変わってきているのかもしれませんが
働く人のためというよりむしろ労基に指摘されないために上手に隠そうとしている感じがすごく寂しかった記憶があります。
エンタメ業界には大きく2つタイプの人間がいます。
利益至上主義タイプと芸術至上主義タイプ
僕が以前所属していた会社は社長のスタイルが完全な利益至上主義でした。
VTRのクオリティなんて50点でいいからその分2倍仕事をしろ。
そすれば利益が2倍になる。
決まってそういう会社は給料が低いし後輩を育てようという気質が生まれません。
どちらかといえば僕は芸術至上主義タイプの人間です。
利益は度返しで「いい物」を作りたいし50点の作品を目指すことはできません。
「ミュージックビデオを◯◯円で作ってください!」
この連絡から3年たった今でも江口さんにお礼を言うことがあります。
僕が嬉しかったのは最初に報酬を提示してくれたことです。
正直、普通なら受けない額の仕事でしたが
「報酬を提示する」というスタイルに作り手として「やりがい搾取」をさせないという気概を感じました。
知り合いに作ってもらうなら心のどこかに
「できるだけ安く」
「あわよくば無料で」
そんな考えが出てしまうのです。
ましてや決して収入が多いといえないアイドルの女の子が
自分の払う額をちゃんと提示する姿はテレビの制作現場にいる大人よりよっぽど立派です。
アイドル業界は一番利益を受けるべきはずの本人が一番末端にいるケースが多い状態です。
よく、揉めているグループの話を聞くと「才能」や「夢」よりも「ビジネス」が優先されています。
「作り手」としてちゃんと評価してもらうには作り手がちゃんと「ビジネス」の勉強をするべきなのかもしれません。
(最近、ドラゴン桜を読んだら勉強の大事さを痛感しました)
やりたいことにちゃんとお金を使う人には戻ってくるものがあるはず。
アイドルという狭い現場の中ではなかなか資金を潤沢に回して
出演者に還元するところまでいかないことが多いですが
ちゃんと相手の立場になって考えられる人になることもエンタメのすごく大切な一部だなと感じています。
いつかそういう「人間力」が実る社会になるといいなと思っています。